このたび、園芸に関する書籍をグラフィック社さんから『南半球プランツ栽培事典』を富田裕明先生と共著という形で出版することになりました。
南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド原産の草花や樹木を中心に、現地の自生状況から実際の栽培方法までを解説しました。
知識と経験をもとに、「育てる目線」で語る情報が詰まった一冊です。
南半球プランツ栽培事典について
この本は「南半球プランツ栽培事典」というタイトルで、冒頭で書きましたが文字通り
ココがポイント
・南アフリカ
・オーストラリア
・ニュージランド
を原産とし分布している草花と樹木にフォーカスした内容です。
共著というのには理由がありまして、当初は南半球界隈の植物の知識が豊富で幅広く熟知されている富田先生の本ということで始まったのですが(確か)、栽培についてもう一人入れた方がという富田先生のご意向で、ありがたいことに僕を誘ってくださいました。
内容についてはもちろん言えませんが、富田先生が撮られた各国のそれぞれの現地で自生している様子やどんな場所(環境)に生えているか、という貴重な画像と解説は本当に勉強になります。
いまはスマホなりPCがインターネットに繋いさえあれば分布地域や自生地の画像を見ることはできますが、
この量の植物の自生地と現地の状況の解説付きとなるといくら情報の海のインターネットと言ってもそんなサイトはないんじゃないかなと思います。
掲載植物について個人的にけっこう好きなオステオスペルマムやガザニアなどいまさら感のあるモノたちや、
ケルミシアといった「いままで国内で流通したことあるの?」といった「誰得」なモノたち、
この数年で一気に知名度が上がり人気種になったモノ、
ランや食虫植物なども取り上げています。
「こんなん絶対育てるの無理」と諦め自分の中でお蔵入りしていた誰得な情報
例えば誰得なモノの中の一部のケルミシアは数年前ですが実生から2年ほど育てたことがありまして
「これは絶対に暖地では無理なヤツ」と判断し栽培を断念したモノです。
まさかこの「諦めた経験」が数年後に役に立つなんて思いもしませんでした。
そのためライターさんに表現をかなり柔らかくして頂きましたが、
僕が送った最初の原稿ではそこそこの量の植物に(特に地中海性気候帯に分布しているモノたち)、
- これは日本では絶対に育たない
- 夏越しも冬越しも相当難しい。気温と湿度を調節できる栽培環境下でようやくなんとかなるレベル
といった本当にやってみて実感したことを忖度ナシで書きました。
そのため
80年代の某アイドル
私まだ読んでないんです
ということは断じてないです。
掲載植物は213種あります
掲載されている植物は213種あります。
すべての種類の栽培について書いた訳ではないですが、特にランなどはまったく触ったことがないのでそういったモノは富田先生におまかせしました。
まぁでもホントたくさん色々書きました。
原稿を書きながら、植物の知識がまったくの0の状態から園芸を始めた2008年の冬、
それを自覚していたのでとにかく覚えるために仕入れたモノをなんでもかんでも育てておいてホント良かったと強く思いました。
-5℃以下に頻繁になる地区でストレリチアの大鉢を植えてみたり、ローダンセを切り戻しと薬剤散布を繰り返しいつまで咲くかやってみたり・・・けっこう色々やった経験が生きました。
たぶん最初から生産者だったらここまでのジャンルの違う種類の植物を触ってなかったと思いましたし、
逆に仕入れだけで仕事をしていたら植物の生育環境のことなどまったく気にせず「ただ販売するだけ」で止まっていただろうなと。
細かいことまではまったく考えが及ばなかっただろうなっと、
園芸を生業にしてからのこれまでのことをありがたいことに思い返すことができました。
コラムもあります
またこの本の中でいくつかコラムがあるのですが、富田先生の分と含めて合計6つあります。
コラムも書くにあたり自分が持っている本や論文の一部を参照させて頂き、自分のこのブログにまだ載せてない情報も書いています。
僕が書いたコラムの1つには気候や自生環境の違いについてのモノがあります。
こちらは名古屋とオーストラリアの西部の都市・パースとの夏の湿度や雨量等の過去の平均値の差を比べ、
夏に雨がほとんど降らない地中海性気候のパースら辺に分布している植物を名古屋の無視暑い中で育てるのは本当に大変で神経を使いますよっという内容です。
気候や環境の差については、富田先生は南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、の3カ国とも何度も訪れた経験がおありで、ニュージーランドは北島・南島はもちろん、オーストラリアも西部も熱帯地域も訪れているため現地の空気感が伝わるように書かれています。
南半球の植物に限った話ではないですが、よく「上手に育てるには自生地の環境を知ろう」というテンプレートのような文言がありますが、それは日本国内で流通している植物の多くが外来種であるためです。
でもそんなの現地に行ったことがない人はわからないですよね。
僕だって訪れたことのない南極の夏の気候なんて想像できないですし。
それでもこの辺りの気候の差を知っておくことはけっこう重要なことです。
少しでもこの環境の差についてお伝えできればっと思いながら書きました。
最後に
なお、本書に掲載されている一部クレマチスの開花写真については、及川フラグリーンの及川洋磨氏にご協力いただきました。ご提供していただき、心から感謝申し上げます。
また、この書籍の制作にあたり携わってくださったすべての皆さま──
編集の方々をはじめライターの平沢さん、写真を撮らせて頂いたりしご協力いただいた方々のご尽力があり、ようやく形になりました。
植物という生き物を扱う以上すべてを完璧に語ることはできませんが(やり方は人それぞれありますしね)、
それでも少しでも「リアルでガチな情報」を提供したいという想いでキーボードを打ち込み続け、2025年2月の大半は手首に湿布を貼り書きました。
使用される・されないとかは関係なくとにかくキーボードを地獄のミサワばりに
「カチャカチャカチャ・・・ッターン!」し続け、このブログの約30記事分の文字量をこの本に打ち込みました。
読者のみなさんにとっての難攻不落だった植物の攻略のヒントや楽しみにつながれば嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
ではでは~(^^)/