どもども〜
アガベの増やし方の1つの「胴切り」のやり方についてです。
胴切りでの増殖とは簡単に言うと
株を切って子株(脇芽)を出して、その子株を挿して増やしていく
という方法です。
なんてお声が聞こえそうですが、オリーブや沈丁花などの木の類やダイアンサスやサルビアなどの草の類の「挿木での増殖」とほぼ同じ理屈です。
少し違う点としてアガベの胴切りは、先にアガベを切りそこから現れた子株を発根させてから土に挿す、といった部分が一般的な挿し木と異なります。
一般底な挿し木は適当な枝を切りそのまま土に挿しますよね。
そういった訳でここではアガベの胴切りのやり方とメリット・デメリット、使う道具、気をつけることについてまとめました。
胴切りの手順
今回胴切りとして用意したのはやや珍しい黄外斑のアガベ・キシロナカンサ 'フロストバイト' という品種。
キシロナカンサは子吹きすると聞いていましたが、斑入りだからか何度も植え替えて7年経っても一向に子株が現れないので胴切りすることに。
この株を切ったのは8月上旬の一年で一番暑い日に行いました。
1. 大きめの株を用意する
胴切りに限りませんが、縦割りするにしてもそこそこ大きい株(若くない株)で行います。
大きい株で行う理由として、小さいと子株が出てこない場合があります。
胴切りできるサイズは種類や品種によって大きさが違うので「この大きさなら可能」ということが断言できませんが、
間違いなく言えるのは3号や3.5号サイズの株は切っても子吹きしにくい、もしくはしないと思います。
2. 株の真ん中辺りで切る
切る位置ですが園芸屋的な発想で、どの植物も柔らかい上部の部分は挿し木する際に発根しないことが多いので、
切り取った頭の部分のアガベが発根するように真ん中の辺りで切ることに。
だいたい真ん中でカッターを入れます。
切るとこのように2つ株ができます。
思ったよりも葉が取れます。この葉を土に挿しても子吹きしないので落ちた葉はそのまま廃棄。
この記事内では左側を「土が付いている株」、右側は発根していない「頭の部分」と呼ぶことにします。
ちなみに切った直後に防菌のためにトップジンMのような癒合剤を塗る人が多いですが、今回は何も塗っていません。
もちろん癒合剤を塗っても良いです。
僕が借りてる元サボテン生産者である温室のオーナーからは「トップジン塗らないの?」っと言われましたし汗。
3. 2つの株はしっかり乾かす
アガベの胴切りでこの部分が一番重要です。
胴切りして分解され2つになったアガベの両方の切り口をしっかり乾かします。
ココがポイント
特に何をするわけではないですが、この作業が一番重要です。
ただ乾くのを待つ、完全に切り口が乾くのを待つことです。
「土が付いている株」も「頭の部分」も切り口に水分、土、ほこりなど異物が絶対に付かないように乾かしてください。
簡易温室などをお持ちの人はその中に置いておくと良いですが、蒸れて腐らないように注意してください。
多少日当りが悪い場所でも良いので、強い風が当たらず雨が当たらない所が良いです。
切り口が完全に乾くのは時期や株の大きさによってかなり差があります。
それでも三ヵ月もすれば必ず乾きます。
乾かすことの重要な理由の詳細は下記に記しました。
4. 子株が現れるのをひたすら待つ
「土が付いている株」に子株が現れる時期について、個体差や種類、品種によりかなり差があります。
確実に言えるのはどの種類も切り口が完全に乾き、株が生きていればいつかは現れます。
今回胴切りしたフロストバイトの場合は、8月に胴切りし子株が現れたのは翌年の5月です。
温室の中に作った冬の時期に発芽させるためのミニ温室の中でずっと管理していても9ヶ月かかっているので、
屋外ですと高温を好むキシロナカンサのような種類はたぶん7月に入ってから子吹きするのはないかと思います。
切り口を乾かしてからの「土が付いている株」の水やりや置き場所などの管理方法ですが、胴切りする前と同じで良いです。
なんとなく葉の数が減ったり株のボリュームが減るからか土が乾くのが遅いので、水やりの頻度と量は減らして良いかなと思います。
5. 頭の部分が乾いたら土の上に置いておく
「頭の部分」の株は切り口が完全に乾いたら、水気がなく湿っていない土の上に置いてください。
ココがポイント
失敗しないポイントです。水気のない湿っていない土!
土に水気があると切り口がカビて株が枯死することがあります。
土の上に置いてから1週間ほどしたら土と切り口との接着面を見てカビているようでしたら、また乾かしてください。
切り口に付いたカビが指などでこすって取っても良いです。
「頭の部分」の大きさにもよりますが、3~6カ月程度でしたら切ったままの状態でも枯れることはありません。
土の上に置いていつまで経っても発根しないからと、焦って水やりすると枯れることが十分にあるので気を付けてください。
画像のフロストバイトは8月に切り10月に土の上に置き、発根が確認できたのは子吹きと同じ時期の5月です。
発根まで9ヶ月かかっています。
4月に入った頃に水切れしたのか葉がシワシワになりましたが、その時に少し水やりしましたが発根を確認するまでは水やりはこの1回のみです。
6. 子株も乾かすこと
4の子吹きした小さい株は手で簡単に外せます。
外した株も切り口をしっかり乾かしてから「頭の部分」と同じように湿っていない土の上に置きます。
発根する時期ですが、これも個体差、種類、品種で差があります。
土の上に置き触ったり持ち上げたりし子株が動かなくなったら発根してます。
発根が確認できたら水やりするなど通常のアガベの管理を行うと良いです。
胴切りの方法 まとめ
上の手順をまとめるとこのようになります。
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1そこそこ大きい株を用意する。
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2株の真ん中あたりで切り取る。
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3切り取った箇所をしっかり乾かす
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4土が付いている株は子が吹いてくるのをひたすら待つ
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5土が付いていない方の「頭の部分」の株は土の植えに置いて発根するのをひたすら待つ
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6子株を外したら外した箇所をしっかり乾かしてから土の上に置く
メリット
アガベを胴切りするメリットについて。
メリットと言ってもほぼ「増殖方法としてのメリット」になります。
アガベを実生(種播き)で増殖しようと思うと、生産者のような生産施設が揃っている人が行ってもそこそこの株に育つまで2年ほどの時間を要します。
特にフロストバイトのような斑入り品種は種がないの種での増殖ができません。
増殖する確実な方法の1つとして胴切りがあります。
子吹きしやすいアガベにも胴切りでの増殖は有効です。
切り口からも子株が出ますが、地下茎からも通常より多めで子吹きします。
余談ですが交流のあるアメリカの熱狂的なアガベ生産者は切り口から現れる子株のことを「Emerging pups」と呼んでいまして、そのまま訳すと「緊急子株」でしょうか。
自生地では踏まれたり食べられたりすることや、
それこそ大木が倒れて株が潰れるなんてことが少ないであろうアガベに「有事」が起こった時の生存戦略でしょうか。
自分の身に生死に直結する何か起こり、その際に生き延びるために小株・「緊急子株」を出すのではないかと思います。
また胴切りには何かの拍子に腐ったり雑菌が入ったり病気になり株が痛んでしまっても、
完全に枯死する前に健全な状態の部分を切り取りその部分を発根させ生育することで、株を更新することができます。
手に入りづらい珍しい品種は増殖しずらいので、枯死してしまったら二度と出会うことができない可能性があるので痛んだ箇所を切り取り正常な状態の箇所を生かすことで、
株は小さくなるものの「大事なコレクション」を維持することができます。
メリット
- 子吹きせず実生でないと増やせないなど増殖させずらい種類を時間をかけず増やせる
- 子吹きしやすい種類はより子吹きする
- 病気など痛みが入り株が枯死するのを止められる
デメリット
胴切りのデメリットですね。
乾燥しきっていないのに土に挿したり、切り口に雑菌が入ったりし分離した2株が枯死することですね。
切らなかったら良かった・・・と後悔先に立たずですかね。
また上でもちょっと書きましたが株が小さい(若い)と子吹きしません。
若い株を切って再生せずそのまま枯れていった・・という経験をされた方も多少はいるのではないでしょうか。
子吹きしなかったものの運良く切った株が生き残っても元のサイズの半分以下の大きさになるのもデメリットでしょう。
もう1点、これが胴切りの一番のデメリットでしょう。実生(種播き)と比べると増殖できる数が少ないです。
アガベは意外と発芽率が多いモノが多く、50粒播くとたいていは30粒は発芽します。
胴切り(縦割りや根伏せも含む)などの「栄養繁殖」で1株のアガベからは30株を作ることはできないでしょう。
デメリット
- 分離した2株ともに枯れる場合がある
- 株が小さい(若い)と子吹きしない
- 子吹きしなかった場合に株が小さくなる
- 実生と比べると時間が短縮できるものの、数は少ない
道具
胴切りだけではないですが最低でも以下の2点は必要です。
ポイント
- 手袋
- アガベを切ることができる物
手袋については説明不要でしょう。
アガベやサボテンを触る人のほとんどは持っている作業用の手袋で良いです。
アガベを切ることができる物ですがタコ糸や釣り糸、ワイヤー、包丁などを使っていると色々な人から聞いていましたが、
個人的にはアガベを切ることができるモノならなんでも良いと思います。
何を使用しても「切ることが出来れば良い」と思ったので、僕の場合は普段使いのカッターとその替え刃です。
ちなみにカッターで切るとこのように葉が折れることがあります。そう、アガベは意外に固いです。
アガベはアテヌアタなどを数種を除き固い物がほとんどなので、切れれば何を使っても良いですが「アガベは固い」というのを念頭に入れ道具を揃えられるのが良いかと思います。
時期
胴切りする時期ですが、種類や品種により適期があるでものの冬期以外だったら良いのではないかなっと思います。
「夏は避けた方が良い」と言われる人が多いですが、
キシロナカンサのように高温を好み真夏にどんどん大きく育つ種類は暑い時期に切っても問題ありません。
実際にこの記事内で切られた株は8月上旬、温室の温度が40℃近い時間帯に行っています。
気を付けること
アガベを切る際に気をつけたいことです。
「切られればなんだって良い」と言いながら注意したいことが1点あります。
ココに注意
切る時に使う道具は清潔な物を使用すること。
清潔な物を使う理由としてベンケイソウ科やサボテン科など一般的に「多肉植物」と呼ばれる部類の植物は、
他の植物と比べると植物体に入った雑菌に対する抵抗力が弱いと言われています。
多肉植物の葉挿しなどの際に「切り口をしっかり乾かしてから土に挿す」理由はこれです。
例えばトレニアやジニアなんかですと、真夏でも湿り気があり直射日光が当たらない土に切った茎をそのまま挿しても発根します。
カッターの歯で替え刃を用意したのも、新しい刃を使うためです。
古い刃で段ボールや紙など色々なモノ切っていたため、刃に何が付いているかわからなかったですからね。
こういった理由でアガベを切る際は雑菌が入らないような工夫をされると良いです。
例えばカッターは新しい刃を用意しなくても、古い刃を洗いアルコールでしっかり消毒すれば良いです。
挿し木する時に使うハサミを毎回アルコールで消毒される生産者は決して少なくありません。
胴切りに限らず挿し木が上手にいかない人は一度枝や茎を切る前にしっかり洗い消毒されると良いかなと思います。
というわけで今回はアガベの胴切りの方法についてでした~
ではでは~