どもども~
種苗登録(種苗法)に関することを。
某フリマサイトやオークションサイトを見ていて、「メルカリ」と「ヤフオク」ですが、簡単に法律違反を見つけられたので取り上げました。
注意
種苗登録されている植物の枝、茎、葉、種もみ(主に米)、根などを権利所持者からの許可無しで譲渡することは種苗法で禁止されています。
枝や茎?というとやや漠然としていますが要するに
種苗登録された植物から取った枝や花をさし穂や切り花として他人に販売する(譲渡する)、ということです。
各部位を乾燥させた状態での販売ももちろん禁止されています。
いちばん多いのは「挿し木苗」ですね。フリマサイトなどで「アジサイ 苗」で検索するといくつも出てくるアレです。
たとえ明確な使用意図を表記していなくても、種苗登録された植物を増殖しその一部を販売してはいけませんってことです。
例えばポインセチアですと、新品種として確立するまで品種改良を始めてから最速で7年とアメリカ人の育種家さんから教えてもらったことがあります。
最速で7年ということは、基本的にはそれ以上の年数を要したモノがほとんどということです。
それだけ時間をかけて作り上げたモノを無断で使用料を払われず販売される側のことを考えると・・・・一般的な常識のある人ならできないですよね。
それではここから詳しく、「知らなかったんだけど」では済まない話を。
違反です。
種苗登録されている「アジサイの枝」や「ペチュニアの茎」を販売してますよね?
という出品物をいくつも見つけて、というか探さなくても目に入ってくるほど出品されていることに驚きましてね。
例えば上の画像です「アジサイ さし穂」で検索し、検索結果166件(2019年5月時点)。
その中にアナベルのさし穂などもありましたが、8割ほどが種苗登録されているアジサイです。
画像のモザイクを1つだけしていませんが、某フリマサイトの出品物です。
「万華鏡 さし穂」で出品されています。
万華鏡は「島系Hyd06-01」という名称で種苗登録されています。
出願番号は25664です。下記にある種苗登録データベースで25664を入れて検索すると確認できます。
そして「万華鏡」は商標登録されています。
共に権利所持者は島根県です。
この出品者はタイトル通りに販売したのでしたら2つの権利を侵害していることになります。
通用しません
たぶん出品している人たちは
勝手な言い分
- 「権利所持者(育成者権者)にバレなければ良い」
- 「販売したって小額だし」
- 「品種名(万華鏡など)を書いてないのでバレないだろう」
- 「これくらいの金額でガタガタ言うな」
くらいの程度の考えしかしていないかと思います。
中には「私が宣伝してやってるんだ、何か文句あるか」と思っている人もいるでしょう。
共通しているのは「みんなやってるし自分だけがとがめられることはないだろう」と思ってやっているであろうということ。
ですが、意外に権利者が把握されていておとがめを受ける可能性があります。
もう一度言います。
おとがめを受けることになりますよ。本当に。
画像だけを掲載し、「品種名を忘れました」やあえて品種名を載せてなくても違反は違反です。
調べればわかります。
賠償請求されない理由
しかしながら堂々と誰でも観覧できるインターネットという媒体で公然と権利侵害されているのにも関わらず、
育成者権を保持している人(法人含む)が
品種登録されているモノを正規の方法以外で販売しているので種苗法違反ですよ
と権利侵害賠償請求しないのには理由があります。
単純に、
弁護士を使い権利侵害で申し立てるのがおっくうだから
という理由が多いようです。
裁判したり弁護士と打ち合わせしたり書類の確認するの、けっこう時間がかかりますからね。
特に「個人」が育成者権者の場合は権利侵害の申し立てたりする場合、顔も住所もすべて違反者に伝わります。
そのため「金額が少ないなら・・・」っとそのまま放置する場合が多いです。
ですが、育成者権者が証拠集めをし始めたら誰でも観覧できるネット上の情報は確固たる証拠となります。
販売者自らが権利侵害をしている証拠をさらけ出しているもんですからね。
証拠の集め方
権利侵害の証拠集めですが、簡単です。
育成者権者の元には種苗登録を取得した際に特別なデータ(DNA等)があるので、それと権利侵害をしているであろう相手方が販売している植物のデータと照らし合わせれば良いだけです。
つまり、
メモ
この度は迅速な対応ありがとうございました。っと書いている相手が育成者権者で、確固たるデータ集めのために購入している場合があるということです。
育成者権者が種苗登録取得植物のデータと照らし合わせるために、違反販売物をデータ照合用に「わざわざ」購入し研究機関等に送ります。
そこで対象植物を解析し、双方が同一のモノと証明されれば証拠として確固たるものとなります。
研究機関への検査依頼は有料です。確か1回で4万円が必要だったと思います。
民事?刑事?逮捕されるの?
まず民事と刑事の違いですが、ざっくり言いますと
メモ
- 民事 ➡ お金で解決
- 刑事 ➡ お金&懲罰
になります。
刑事の懲罰ですが、よく言われる「懲役〇年、執行猶予〇年」と言うモノですね。
ちなみに種苗法違反は刑事事件です。
流れですが、逮捕からの起訴、裁判、判決(無罪か有罪か)というのが一般的です。
ちなみにですが、2018年の法改正で種苗法違反は執行猶予が付かなくなりました。
これが何を意味するかと言いますと、起訴=刑務所行き になったということです。
「起訴=刑務所行き」の理由ですが、このような証拠が集めやすい事件の場合の裁判では無罪になることはほとんどありません。
警告と示談
例えがアレですが、不倫裁判なんかとほぼ同じ流れです。
いきなりです
「こうこうこういったことで権利侵害していますので〇〇までに▲▲円を払ってね。〇〇までに入金ないと刑事告訴しますよ。」
という内容証明が送られてくることが通例です。
早い話、示談です。金で手を打ちますよってことです。
ご存知だと思いますが刑事告訴され受理された場合は捜査機関(主に警察)は捜査する義務が発生します。
そのため「刑事告訴の受理=ほぼほぼ逮捕」です。
海外の警察ではそうでもないですが、日本の警察の場合は逮捕=ほぼ100%起訴へ、という流れになります。
逮捕後に起訴され権利侵害が裁判所で認められたら罰金(国に納付分)と懲役刑で「前科」が付きます。
インターネットという媒体は記録を残しやすく残り安いので、
たとえ「匿名での取引」とはいえ運営元が販売者情報を持っているので)、証拠不十分で不起訴になる可能性はかなり低いでしょう。
「匿名」と言ってもアカウントを作る際に登録してますよね、自分の住所や氏名や電話番号を。
そして国に納付分の罰金以外に、権利者権者から請求される損害賠償を支払わなければなりません。
重要
刑事裁判で敗訴すると、つまりこの場合、国と権利者権者の2者に支払いを行わなければなりません。
裁判前に内容証明がどこの誰かも知らない人から送られてきたら、さぞかしビックリするでしょう。
このような内容証明はある日突然やってくるのです。
◯才男性
え・・・売ったっていったって〇〇円程度なんだけど・・・この程度の金額なんだしなんで?
というのは言い訳にもなりません。
それと利益を得ていたであろう額が損害賠償額の上限ではなく、それを越える額を育成者権者は請求できます。
また上記に例として挙げた万華鏡のように商標登録を侵害している場合もあります。
こちらは商標法違反です。この件でも合わせて起訴される可能性があります。
正規品
こちらのハイドランジア リップルは市場で販売用に仕入れた株です。
正規品と呼ぶのもやや変な感じがしますが、種苗登録されている植物にはこのような品種登録番号が書かれているラベルがほとんどの場合は付けられています。
ラベルを拡大すると
このように農林水産省登録品種と番号が書かれています。
植物の苗を買った経験がある人はこのようなラベルを一度は見たことがあるはずです。
このラベルが
ココがポイント
という品質の保障の証明となります。
切り花のようにラベルが付けられないモノもありますが、鉢物や苗物で種苗登録されている植物が市場に流通する場合はほとんどこのようなラベルがあります。
種苗法改正により2021年4月からは登録品種の種苗を販売する際に表示が義務化されたため、品種登録された品種にはラベルなどで「種苗登録番号」などが表示されます。
逆に言うと、種苗登録されていてこういったラベルが無い植物が販売されている場合は高い確率で権利侵害している、ということになります。
当たり前ですが「このラベルを付けて発送します」と明記し、実際はラベル無しで発送した場合ももちろん権利侵害となります。
少し考えればわかりますよね。
申請中の場合は?
たまに申請中の品種になります、と書かれているラベルもあります。
以前このように言われたことがありますが、
ある人
申請中だから今のうちに増やして販売してもOK!
申請中の品種に関しても申請者には「仮の育成者権利」というものが認められます。
そのため申請中だからと言って増殖し販売して良い訳ではありませんのでご注意くださいね。
種苗登録されているモノが多い主な植物
一般的に流通している苗や鉢物で出荷される植物で、種苗登録されているモノが多いものをざっくりですが挙げてみました。
※僕の独断です。
注意ポイント
- アジサイ
- バラ
- カーネーション
- シクラメン(鉢物)
- ポインセチア
- 菊(マム)
- カリブラコア
- 栄養系ペチュニア
その他ですと海外系の種苗会社のラベルが付いているラベンダーやニューギニア・インパチェンスなどはほとんど種苗登録されている印象があります。
野菜苗ですと昨今ですと病気を各地にまき散らす原因にもなっている、栽培地が不明で品種物のサツマイモの苗ですね。
サツマイモの苗の場合は無許可増殖以外にも、病気をまき散らす「二次被害」も問題になっています。
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最後に
個人的な意見ですが、こういったことはモラルや一般常識だと思います。
庭先にある鉢植えを盗んだり、「インスタ映え」のために勝手に人の庭に入ったりするのと同じ低次元の話です。
第三者目線で、あの人は頭がおかしい、というレベルの話だと思います。
それと一般流通している値段よりも安くで買えるから、という理由で権利侵害されているモノを求める人に対しても正直「おいおい大丈夫か?」と思っています。
育種者の長年の努力がうんたらかんたら・・・・というよりも、
自分がその人の立場になり、無許可で販売されている卑しい光景を見たらどう思うでしょうかね?
あと種苗登録品を無許可に販売している人の年代は、一般的な社会常識を覚えている最中の10代ではないはずです。
30代、40代、50代、この辺りではないでしょうか。
某フリマサイトの利用年代層で一番多いのは60代、というデータも見たことがあります。
ここからは実例を。
実例
- 2020年に三重県の50代女性がアジサイの無許可販売で書類送検されています。
- 2021年6月には愛媛県の30代の男性がシャインマスカットなどの無許可販売を警視庁がサイバーパトロールで把握し摘発され書類送検されています。
- 2024年9月には「いけないと知っていたが、まあいいだろう思い出品」“究極のバラ”を無許可でネット販売した疑いで女性を書類送検 約40件の売買を繰り返していたか とバラの無許可販売をフリマサイトで繰り返したと報道されました。
2023年9月からは農研機構がフリマアプリ監視強化を発表されました。着々と水面下で状況が変わってきています。
書類送検は「逮捕よりも書類だけの処理で軽い印象」を持ちそうですが、「身柄を拘束されず検察庁に事件が渡される」ため逮捕よりも進んでいる状況ということを理解してください。
〇〇歳
種苗法違反の無許可販売して逮捕されました
自分の親がこんなことで逮捕され懲役刑を受け、前科がついたら今後の子どもの立場を考えるとつまらないですよね。
また海外で日本の農家さんや各県の農業試験場が年単位をかけて作り上げたイチゴやブドウ、サツマイモなどが盗まれ、盗んだ国が名前を変えてオリジナルブランドとして販売されていることを知っている人も増えたと思います。
登録品種の無許可販売はこれらの国の人間が行っていることと同じことをしていると自覚してください。
無許可販売を行うことで巡り巡って「国益の損失に一役買い、さらに日本の農業の衰退を助長している」ということも自覚してください。
道徳と知性の問題です。
また僕の周りの農家(生産者や育種家)で独自で品種改良しその品種の権利所持者が何人かとこの件で話を聞きましたが、
全員が匿名性の高いメルカリ等のネット販売で無許可販売されているのを把握しています。
中には自治体に申し立て出品を止めさせたという人物もいます。
くれぐれも自己責任で行ってくださいね。
それでは種苗登録についてでした~
ではでは~